【HSPさんのための認知バイアス入門】2 二分法の誤謬(ごびゅう)

HSPさんのための認知バイアス入門
頼み事をしている画像

仕事で何かを頼まれたとき
「引き受けなくちゃこの人に嫌われちゃう・・・」
と思って、やりたくもないことを引き受けたことはありませんか?

私はめちゃめちゃあります。笑
でもこれしちゃうと、自分の時間と心の余裕がすごくなくなっちゃうんですよね・・・。

ここで1つ考えてみてほしいのが
「本当にその仕事を引き受けないと嫌われてしまう未来しかないでしょうか?」
ということです。

そうじゃないの?
と思ったあなた(そして過去の私)は
認知バイアスの1つ、二分法の誤謬(ごびゅう)の罠にかかっているかも知れません・・・

「認知バイアスって何?」と思った方はこちらの記事がおすすめ

二分法の誤謬とは

二分法の誤謬
:実際にはより多くの選択肢があるのに、限られた選択肢しかないと思ってしまう
 ことによって生じる考え方の誤り

今回の例で言うと、私がみなさんに
「本当にその仕事を引き受けないと嫌われてしまう未来しかないのでしょうか?」
と聞いたとき、「そうでしょ?」と思ったみなさんの頭の中には

1. 仕事を引き受けたら嫌われない
2. 仕事を引き受けなかったら嫌われる

の2つの選択肢が思い浮かんで
「仕事を引き受けなかったら嫌われてしまう」という結論を導き出したのかもしれません。

でも、本当は上の質問に対する答えの選択肢は2つだけじゃないですよね?

1. 仕事を引き受けたら嫌われない
2. 仕事を引き受けなかったら嫌われる
3. 仕事を引き受けても嫌われる
4. 仕事を引き受けなくても嫌われない

ですよね?

二分法の誤謬の解説イラスト

では、どうして私も含め多くの人の頭の中では
上に示したような「本来あるはずの選択肢を見落としてしまう」ことがあるのでしょうか?

二分法の誤謬が起こる仕組み

二分法の誤謬が起こる大きな理由として
物事や概念を2択で判断したがる
と言う人間の考え方のくせがあります。

例えば・・・
空間を2つに分ける「上下」「前後」「左右」
大きさを2つに分ける「大小」「長短」
明るさ(もしくは状況)を2つに分ける「明暗」

それだけではありません。
「善悪」「真偽」「優劣」など
気持ちに関わる抽象的な概念までも2つに分ける言葉がたくさんあります。


でも、実際はどうでしょう?
30cm物差しは長いものか?短いものか?
恵まれぬ人のために盗みを働く人はいい人か?悪い人か?

それは判断する人や、比較する基準によって変わってきますよね

それなのになぜ、人はものごとを2択で判断したくなってしまうのでしょうか。

結論は簡単。「楽だから」です。

考えてみてください。

↓↓↓これ、何色ですか?↓↓↓

黒

これは「黒」です。
ではこっちはどうでしょう?

これは「少し黄色みを帯びたかなり黒に近いグレー」なのですが、
もしこの2枚目だけ見せられたら「黒」って答えたくなりません?

「真っ黒ではないなあ〜」と思ったとしても
「どうして真っ黒に見えないのか」を導き出そうとしたら、
考えるために脳のエネルギーと容量をたくさん使うことになってしまうので
無意識のうちに「白」か「黒」の簡単な2択で結論づけようとしてしまうのです。

つまり、二分法の誤謬は
「いっぱい考えるのしんどいよね〜」と脳が判断して
極端な選択肢以外を切り捨ててしまうことによって起こる
認知バイアスのです。

これが、色だけではなく普段の人との関わりの中で起こることで
私たちの生活にさまざまな影響を与えています。

二分法の誤謬がHSPさんに与える影響

二分法の誤謬がHSPさんに与える影響は、大きく分けて2つあります。

これの例には冒頭の「仕事を頼まれるとつい引き受けてしまう・・・」
といったものがあります。

たとえ頼まれた仕事がやりたくないものだったとしても
「仕事を頼まれた」ことに対して思い浮かんだ選択肢が
「仕事を断って嫌われるかもしれないリスクを負う」
「仕事を引き受けて嫌われないようにする」
の2つしかなかった場合

周りの人の評価に自分の評価が影響されやすい性質を持つHSPさんの多くは
相手の人に嫌われたくない気持ちが勝ち
「仕事を引き受けて嫌われないようにする」
という自分の本当の気持ちとは異なる行動をとってしまうことがあります。

また、「周りの人に嫌われたくない」だけではなく
「周りの人の迷惑になりたくない」
「周りの人に幸せになってほしい」などの気持ちも
この二分法の誤謬を引き起こす原因となりやすいでしょう。

HSPさんが二分法の誤謬にハマるきっかけになる気持ちの例

ただ、二分法の誤謬の罠にはまり、自分の気持ちに添わない判断をしてしまうと
自分のできる仕事量を超えるものを抱えてしまってしんどくなったり、
自分が安心できる居場所が減ってしまうことにつながりかねませんよね。


HSPの性質を持つ人が「生きづらい」と言われる原因の1つに
「〇〇すべき」という考え方が強いことが挙げられます。

例えば・・・
「夜は10時には寝るべきだ」
「朝はご飯と納豆を食べるべきだ」
といったマイルール的な、たくさんの「〇〇すべき」という思考に囲まれて毎日を過ごしているHSPさんは少なくないはずです。

私は、このような「〇〇すべき」という思考が生まれる要因の1つに
二分法の誤謬があると思います。

例えば、「夜は10時には寝るべきだ」と思っている人が
そう思っている理由として「健康のためには8時間睡眠が必要だ」を挙げるとします。

つまり、その人は「夜10時に寝ると健康になれる」と考えているんですね。

それ自体は間違っていないし、悪いことではないのですが、
もしその裏の「夜10時に寝ないと健康になれない」という考えにとらわれてしまうとどうでしょう。

仕事が遅くなったり、旅先の流れで友達に合わせたりして
10時に寝ることができなかった時(つまりマイルールが崩れたとき
その人は「健康を損ねてしまうんじゃないか・・・」と
大きなストレスがかかってしまうことが簡単に想像できますよね。

では、HSPさんが二分法の誤謬によって正しい判断ができなくなった結果、
心がしんどくなってしまわないためにはどうしたらよいでしょうか。

二分法の誤謬との上手な向き合い方

二分法の誤謬に正しい判断をジャマさせないようにするためには

本来あるすべての選択肢を考える(見落としている選択肢に気づく)
ことがとても大事になってきます。

そして「すべての選択肢」の数は「2のn乗 n=話題に上がった項目の数」
から求めることができます。

冒頭の仕事の例でいくと、話題に上がる項目は
「仕事を受けるか受けないか」
「相手に嫌われるか嫌われないか」
の2つ(n=2)。

よって、ここで考えられるすべての選択肢は2の2乗
つまり4つ。この文の冒頭で提示した選択肢の数と同じですね。


自分が直面したできごとや、マイルールに対して
自分が取ることができるすべての選択肢を把握できるようになることは

自分は本当にそれを「すべき」なのかな?
それをしないことは、必ず自分にとって都合の悪い結果につながることなのかな?

と、考えるきっかけになるでしょう。

それが積み重なって、
自分の中での「〇〇すべき」が少しずつなくなってきた時

どんな状況でも自分の気持ちを大切に、心穏やかに過ごすことができる
しなやかなメンタルを手に入れることができているのではないでしょうか・・・?

【参考文献】
・情報文化研究所 情報を正しく選択するための認知バイアス辞典 フォレスト出版株式会社 (2021)
・マーケターブログ 誤った二分法:人はなぜ、白黒つけたがるのか?

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