周りの人の意見に影響されやすく
「本当に自分がしたかったこと」を見失ってしまいがちなHSPさん。
例えば進学などの人生の大切な節目でこんな言葉をかけられたことはありませんか?
「ちゃんと勉強しなよ。共通テストで8割取らないと、〇〇大学の受験資格が
なくなっちゃうよ。〇〇大学に行けないと充実した講義が受けられないから、
有意義な大学生活は送れないよ!」
こんな言葉を聞いた時、みなさんはどんな感想を抱いたでしょうか。
「確かに!有意義な大学生活を送るために〇〇大学に進学した方がいいね!」
と思ったあなたは認知バイアスの1つである
「滑りやすい坂論法」の罠にはまっているかもしれません・・・。
滑りやすい坂論法(滑り坂論法)とは
滑りやすい坂論法(滑り坂論法)
:比較的小さな最初のステップが、その後の起こるべきではない(起こってほしくない)
結果に必ずつながってしまうので、その最初のステップを引き起こさないようにしない
といけないと主張すること。
条件に因果関係(原因と結果の関係)がないのにあるように見せる論法。
冒頭に示した例のように、非合理的な理論で人を説得するときに使われます。
滑りやすい坂論法(滑り坂論法)が起こる仕組み
この論法には、「条件文の推移」という文の組み立て方によって作られています。
条件文の推移
:「AならばB」、「BならばC」の時、「AならばC」も成り立つ
冒頭の例の話をつくっている要素は
A:◯◯大学の受験資格を失う
B:〇〇大学に進学できなくなる
C:有意義な大学生活を送れなくなる
となります。
このとき、最初の条件文(A=B)にあたるのは
「〇〇大学の受験資格を失うと〇〇大学に進学できなくなる」
これは間違っていないですね。
次の条件文(B=C)は
「〇〇大学に進学できなくなると、有意義な大学生活を送れなくなる」
そして結論(A=C)が
「〇〇大学の受験資格を失うと、有意義な大学生活が送れなくなる」
という組み立ての文章になります。
「〇〇大学の受験資格を失う」ことがきっかけとなり
坂を転がり落ちるように悪いできごとが続くかのような印象を受ける文ですね。
なので、話し手としては
「勉強して、悪いできごとのきっかけになる〇〇大学の受験資格を失わないようにしようね」
と、言いたいのでしょうが、
いやほんまかいな。それ。
本当に〇〇大学の受験資格を失うと、有意義な大学生活を手にいれることは
できないのでしょうか?
そもそも「有意義な学生生活」とはなんでしょう?
その言葉が意味することは、
「充実した講義を受けること」だけでしょうか?
「気の合う友達と出会い、楽しい時間を共有できる」
「時間があるから新しいことに挑戦できる」
「何もしなくていい時間がたくさんある」
そんなことも大事だったのではないでしょうか?
私自身、空きコマ(90分)に友達と往復40分歩いてスタバに行った思い出や
時間があったからこそ参加できた野外活動ボランティアで
出会った子どもたちの笑顔なしに
「大学生活が充実していた」ということはできません。
だから、みなさんも経験上おわかりかとは思いますが、
ある1個の大学に行けなかったからと言って、有意義な大学生活は送れない
という文は真実ではありません。
なのに、「〇〇大学に進学できなかったら”絶対に”有意義な大学生活は送れない
(だから受験資格を失わないように勉強しろ)」と主張するのがこの「滑りやすい坂論法」なのです。
そして、この「滑りやすい坂論法」は日常のあらゆるところに潜んでいて、
何かと他人軸になりやすく、また不安が強い傾向があるHSPさんの
メンタルを揺らしてしまう原因となってしまっていることがあります。
滑りやすい坂論法(滑り坂論法)がHSPさんに与える影響
では、「滑りやすい坂論法」はHSPさんの日常にどのような影響を与えているのでしょうか?
自分にとって不本意な選択をしてしまう
自分と他人の心の境界線が薄く、周りの考えが自分の考えであるかのように
錯覚してしまうことも少なくないHSPさん。
また、未知の刺激に対する不安感も強い人が多いので、
どちらかといえば「不安をあおる」ことで人を説得する滑りやすい坂論法は
HSPさんの決断を揺らす大きな原因となることがあります。
相手が自分のことを思って言ってくれたものであればまだいいのですが、
うまく相手の思うツボに自分の気持ちが誘導されてしまったり、
そのせいで自分の本当の気持ちがわからなくなってしまったら悲しいですよね。
一歩踏みだす勇気を失ってしまう
基本的にこの論法は誰かを合理的ではない論理で説得するときに用いられるものです。
ただ、刺激や環境の変化に敏感に反応し、疲れてしまいやすいHSPさんが
それらから自分を守るために滑りやすい坂論法を自分の中で繰り広げ、
「新しい挑戦をすると、自分にとって不都合な結果になる」
と結論づけてしまい、新しい挑戦をすることをやめてしまったり、
チャンスを逃してしまう・・・といったことが考えられます。
(例)「(今の職場に不満はあるけれど)転職をすると給料が下がるかもしれない。
給料が下がると今の暮らしを維持できない。今の暮らしを維持できないと
幸せになれない。」
→【結論】転職をすると幸せになれない
滑りやすい坂論法(滑り坂論法)との上手な向き合い方
では、HSPさんが自分の本当の気持ちを見失ったり、
「何かに挑戦する自分」を自分でジャマしてしまわないように
「滑りやすい坂論法」とどう向き合っていけばよいでしょうか?
それは、その結論に至った証拠があるのかどうかを考えることです。
ここまでの文で例に挙げてきた
「〇〇大学に進学しないと、充実した大学生活は送れない」
「転職をすると幸せになれない」という説は、
いずれも必ずその通りになるとは言い切れない、つまり
その結論に至るための(十分な)証拠がない説です。
せっかくやりたいことがあるのに、
なりたい自分がいるのに、
起こる「かも」しれない悪いことに直面したくない、という理由で
最初の一歩を踏み出せないのはすごくもったいないことじゃないかな?
と、私は思います。
宝くじも買わなきゃ当たらないですよね。
それに、私たちは目標に向かって努力できるので、
「想定した(させられた)悪いことは起こらず、自分の思うようになる」
という確率は、宝くじが当たる確率より遥かに高いはずです。
途中で軌道修正することも、引き返すことも難しくはありません。
とりあえず、心躍る方に進んでみましょ〜う!(^^)
【参考文献】
・情報文化研究所 情報を正しく選択するための認知バイアス辞典 フォレスト出版株式会社 (2021)
・倫理学研究所 生命・遺伝子操作に適用された「滑り坂論」の意味を捉えるために
⚠️認知バイアスについては、本来の意味と異なるものを紹介しないよう細心の注意を払っておりますが、
HSPさんにどう影響するかについては個人の解釈が入っております。
こういう考え方もあるんだなあ〜という気持ちで見てくださると嬉しいです!
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