人は誰しも失敗をします。
場合によってはそれが原因で誰かに怒られることもありますよね。
そこでちょっと思い返してみて欲しいのですが、
怒られた経験の中でも
「心が傷ついたもの」と「傷つかなかったもの」ってありませんか?
そして、(ちょっと辛いですが)前者だった時の相手のセリフを思い返した時
こんなことを言われませんでしたか?
「お前が不注意だから失敗したんだ」
「いつもボ〜ッとしてるからミスしたんだろ?」
「AもBもできないお前にCなんてできるわけなかったんだ」
もしこんな言葉であなたが傷ついてしまっていたとしたら、
今後一切気にする必要はありません!
なぜなら、これを言った相手は(無意識かもしれませんが)
認知バイアスの1つ、「対人論法」を使ってあなたの心をねじ伏せようとしているからです。
対人論法とは
対人論法
:問題(論点)そのものではなく、問題を起こした(論点の中心になる)人
の性格などを批判することで、相手の主張を退けようとすること。
例えば、冒頭であげた3つの言葉を
「あなたが仕事でメールの送信先を間違えた」ために上司から言われた言葉だとします。
では、このミスが発覚した時
あなたと上司が話し合わなくてはいけないことはなんでしょう?
「なぜこのミスが起きたか」
「次に同じミスを繰り返さないためにどうすればいいか」
つまりミス(起こった事柄)についての話ですよね?
ミスを起こしたあなたの性格や、普段の仕事ぶりは、
全く関係ないとは言えないまでも重要な要因ではないはずです。
ですが、あえて性格や仕事ぶりなどの
「自分の短所」とも言える部分を引き合いに出されると、
自分の後ろめたい面に目がいき、相手に反論できなくなってしまいます。
メールの送信先を間違えた要因に
「上司が送信前のダブルチェックを怠った」
など相手の落ち度があったとしても
上のような言い方をされると、大抵の人は言い返せなくなりますよね。
相手の性格を攻撃することで自信を失わせ、自分が優位に立つ
これが対人論法なのです。
対人論法が起こる仕組み
対人論法が起こる原因の根本は人に対する偏見や差別する気持ちだと言われています。
普段から特定の人や集団に対して抱いている
「ノロマ」「貧乏」「バカ」などという偏見や差別意識が、
何か起こった時の理由付けとして表面に現れると対人論法として相手にぶつけられます。
ネガティブなものだけではありません。
「資産1億円の投資家が語るお金持ちになるための秘訣」
なんだかためになることが聞けそうじゃないですか?
そして実際この話を聞いた人の中の一部は、
「お金持ちの人のお金の話は信じられる」という一種の偏見のもと
話の内容を吟味することもなく、真似しようとするはずです。
これも、対人論法による認知(考え)の誤りによって起こる事態だと言えます。
対人論法がHSPさんに与える影響
では、HSPさんが対人論法をぶつけられた時、
それを対人論法だと気付かず受け取ってしまったら、どんな影響があるでしょう?
自己肯定感が下がる
そもそもHSPさんは、
周りの人の意見や考えに影響されやすい他人軸な面があることに加え、
「自分は変わっている」「理解されない」
といった意識があることから自分に自信が持てない傾向があります。
そんな中、他人から面と向かって自分の性格を非難されると、
それが図星であればあるほど、HSPさんの心に深く突き刺さります。
そして、本来の論点はそっちのけで、
「自分はやっぱり受け入れられないダメな人間なんだ・・・」
と、自信を失ってしまうことがあります。
言いたいことが言えなくなる
本来対人論法は、その名の通り自分の他に相手がいて成り立つものです。
一方で、HSPの気質を持つ私の肌感覚ですが、
「自分で自分に対人論法を使っていることがあるんじゃないかな?」
と思うことがあります。
例えば冒頭の例のように、メールの送信先をミスしてしまった時、
その原因を追求したり、上司の言葉を待ったりすることもなく
「自分が不注意だからミスしてしまったに違いない」
「あの印刷もできなかったのに、メール送信なんてできるわけなかったんだ」
などと、「ミスは自分の性格や能力のせいである」と結論づけてしまってはいないでしょうか?
これをしてしまうと自分の後ろめたい部分に気がいってしまい、
例え相手の落ち度を見つけたとしても言い出すことができず、
自分が不利な状況におちいるのを、ただ受け入れることしかできなくなってしまいます。
対人論法との上手な向き合い方
では、対人論法によって自分に自信をなくしたり、苦しい立場に立つことがないようにするために
私たちができることはなんでしょうか。
それは、「その話題で一番重要なことは何か」を考えることです。
ミスを再び起こさないために重要なのは、ミスが起こった状況や、今後に向けての対策です。
何かを始めるときに重要なのは、それを始めるために必要な時間やお金、環境でしょう。
場合にもよりますが、「あなたの性格や能力」が最重要事項である事柄は、そう多くはないはずです。
対人論法は人格攻撃の1つです。
理不尽な攻撃なので、傷つく必要はありません。
例えあなたがどんな性格でも、
周りの環境や工夫次第である特定のミスを起こさないことは可能だし、
挑戦すればどんなこともなしとげられる可能性があります。
また、ミスは責めても、ミスした人(自分)を責めることなく、
その場その場で自分のできることを着実にこなしていけたら、
「がんばってる自分」に対する自信も少しずつ芽生えてくるはずです🌼
【参考文献】
・情報文化研究所 情報を正しく選択するための認知バイアス辞典 フォレスト出版株式会社 (2021)
・クレームナビ 【No.124】対人論法
・興味津々心理学 対人論法と人間関係
⚠️認知バイアスについては、本来の意味と異なるものを紹介しないよう細心の注意を払っておりますが、
HSPさんにどう影響するかについては個人の解釈が入っております。
こういう考え方もあるんだなあ〜という気持ちで見てくださると嬉しいです!
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:理不尽な人格攻撃は他にも・・・。
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