【HSPさんのための認知バイアス入門】15 ステレオタイプ

アイキャッチ画像です HSPさんのための認知バイアス入門

人一倍共感能力が高く、無意識のうちに他人の感情の動きに影響されやすいHSPさん。
テレビで流れるニュースなどに大きく感情を揺さぶられる人が多いと言われています。

そんなニュースの中でも、人種・性別・宗教などの属性による差別、
戦争などはどうして後をたたないのでしょうか。
出身地や大学で就職や結婚の難易度が変わってしまうのもなぜでしょうか。

また、自身が「HSPだから」「神経質だから」
と、心無い言葉をかけられて落ち込んだことがある方もいるかもしれません。

こういったことが起こる原因の一つに
ステレオタイプという認知バイアス(考えの偏り)があります。
ということで今回は、

  • ステレオタイプの定義・仕組み
  • ステレオタイプがHSPさんに与える影響
  • ステレオタイプによる悪影響を受けないためにできること

について紹介します。

ステレオタイプについて知ることで、悲しい差別から自分の心を守れるだけでなく、
少ない情報で多くのことを推察しようとするHSPさんが、早とちりで誰かを傷つける
可能性を低くすることができます。

つまり、HSPさんにこそ知っておいてほしい認知バイアスなのです。

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ステレオタイプとは

ステレオタイプ
:性別や出身地、職業などの複数のグループで分けられるものに対して、そのグループに所属する個人ごとの違いを無視して、ひとまとめの特徴があると考えること。

アメリカのジャーナリスト・政治評論家であるウォルター・リップマンが
浸透させた概念です。

また、ステレオタイプの特徴には、

  • 過度に単純な形であること
  • 確かではない情報や知識によって誇張され、歪められたものであること
  • 好き嫌い、善悪、正邪、優劣、などの強い感情を持っていること
  • ステレオタイプに反する新たな情報や経験に出会っても、その考えを変えづらいこと

といったものがあるとされています。

  • A型の人はきっちりしている
  • 〇〇大の人はお嬢様だ
  • 女性は家事が得意だ
  • 関西人は笑いにうるさい

などなど、例を挙げればキリがありません。
要するに決めつけ的な考え方のもとになる認知バイアスです。

ちなみにステレオタイプの “Stereo” は、
昔印刷に使われていたステロ版(鉛版)が語源であり、その特徴から、
「型を使ったかのように同じもの」という意味でこのバイアスの名前になりました。

ステレオタイプが起こる仕組み

ステレオタイプは、前もって得ている情報で、同じものを見た時でも
人によって注意を払う場所が変わってくる特徴によって起こります。

もっというと、人は何かものを見る(判断する)ときに
「どんなものだろうか」というよりかは「こんなものだろうな」
と自分の中で見立てをしてから見る特徴があるということです。

例えば先ほど挙げた「〇〇大の人はお嬢様だ」を例にすると、
その情報を誰かから聞いていた人、つまりそういった見立てをした人は、
そうでない人に比べて

  • 〇〇大の人が持っているブランド物のバック
  • キレイめの服装をした学生
  • 優雅な仕草

などの「お嬢様」に当てはまりそうな項目に目が行きやすくなってしまいます。

その結果、自分の記憶に偏りが生まれて、ステレオタイプが強くなるのです。

ちなみに似た仕組みで起こる認知バイアスにバーナム効果があります。
ぜひこちらの記事もチェックしてみてください。

ステレオタイプがHSPさんに与える影響

では、ステレオタイプによって考え方に偏りが出ると、
HSPさんにどんな影響があるのでしょうか。

  • 効率的な判断に役立つ
  • 差別や偏見のもとになる

の2点から考えていきましょう。

効率的な判断に役立つ

ステレオタイプによる考え方は、「とっさの判断」に役立つことがあります。

例えば、車の運転をする時を思い出してください。
あなたは曲がるタイミングをはかっている中、誰かが横断歩道を渡ります。

もしその「誰か」が若者だったら、その人が渡り終えそうなタイミングを
予想してハンドルを切る人でも、お年寄りや子どもだったら、完全に渡り終えたのを
見届けてからハンドルを切りませんか?
(慎重な運転になりませんかということが言いたい)

これは、横断歩道を渡っている実際にその「誰か」の運動能力や注意力を推定して
判断しているのではなく、

  • 若い人は自分(車)の動きをちゃんとみている
  • お年寄りは歩く速度がゆっくりだ
  • 子どもは前しか見ていない

などといったステレオタイプに基づいて判断をした結果だと言えるでしょう。

いろいろなことを深く考えるため、優柔不断になりやすいHSPさん。他にも、

  • (自分が食べるものを決められない時)お店の看板メニューはおいしい
  • (何か情報収集したい時)ベストセラーならわかりやすい

といった、あまり考えたくない場面や、素早い判断が求められる場面などには、 
ステレオタイプを活用してみても良いかもしれません。


ちなみにエンターテインメントの世界ではこれを逆手にとって、

  • 正義は悪に勝つ
  • 主人公とヒロインは結ばれる
  • 主人公は明るいみんなの人気者だ

なんていう観客(読者)のステレオタイプの逆をいくようなストーリーを
設定することで、「面白い!」と思うようなものを作ったりしています🙌

差別や偏見のもとになる

ステレオタイプは差別や偏見のもとになる認知バイアスとしてよく知られています。
先に紹介したステレオタイプの4つの特徴からもわかるように、

  • 血液型がB型の人は変わり者
  • 〇〇大学出身の人は真面目
  • 身長が高い人はスポーツが上手い

などの事実に基づかない(真実ではない)ステレオタイプが多く存在します。
その内容が、血液型や星座などの属性に関するものならあまりその真偽は
大したことではありません。ですが、

  • ゆとり世代はやる気がない
  • 女性は高い学歴をつけるべきではない
  • 正社員でなくては生きていけない
  • 〇〇出身の人はガラが悪い
  • 宗教を深く信仰している人は考え方がおかしい
  • 〇〇人はすぐに嘘をつく

などの理不尽なステレオタイプによって、進学や就職、結婚などに悪影響を
及ぼされている人が無数にいるのは事実です。

性別や国籍、出身地など、自分ではどうにもできないカテゴリーに邪魔をされて、
「自分」という1人の人間を正当に評価してもらえない悲しみ・苦しみは
想像するだけで胸が痛むほど深く大きいものでしょう。

ステレオタイプと上手に向き合うために

では、ステレオタイプによって傷つき・傷つけられないように
私たちができることは何でしょうか。

  • 自分もステレオタイプな考え方をすると自覚する
  • 客観的なデータを活用する
  • 属性ではなく個人と向き合う意識を持つ

の3つの視点からご紹介します。

自分もステレオタイプな考え方をすると自覚する

どれだけ偏見のない目で物事を見ようと心がけていたとしても、
それをゼロにすることはできません。私もです。

なぜなら、様々な経験と出会いを重ねる中で感情を揺さぶられ、
学習してきた結果が今の私たちだからです。

学習してきたからこそ大人の私たちは、
道端で話しかけてくる怪しい人にはついて行かないし、
高嶺の花だと判断した人を執拗に追いかけたりはしません。

ステレオタイプを持つことはうまく生きる術を身につけることでもあります。

ただ、それがあくまでも「思い込み」、よく言って「予想」であること、
自分が間違っているかもしれない考えを事実とは別に持っていることは
心に留めておく必要があるでしょう。

客観的なデータを活用する

ステレオタイプという名の「思い込み」で判断を誤らないためには、
数値によるデータや第三者の意見といった客観的なデータが役に立ちます。

SNSでよくPRされている化粧品も口コミを見てみたら賛否両論あった、
顧客満足度100%の商品の「顧客」が自分とは全く違うニーズを持った人であった、
なんてことは珍しくありません。

でもそれは、自分に「よく見る化粧品だからいいもの」
「顧客満足度が高いサービスはいい」というステレオタイプがあることに気づき、
違った視点で情報収集をすることで、初めて気づく事実だったりするのです。

属性ではなく個人と向き合う意識を持つ

O型でも細やかな感性を持った人はたくさんいます。
家事が苦手な一方で、仕事への情熱に溢れた女性もいます。
面白いことが言えない関西人だって数え切れません(私)。笑

出会う人1人1人と丁寧に向き合って、
その人だけの素敵なところや弱いところを理解することで
初めて「その人」を理解することができます。信頼関係を築くことができます。

それは面倒で、どうあがいても時間がかかるものです。
でも、これをここまで読んでくださったあなたには、安直なグループ分けによる
思い込みで素敵な出会いを逃さないでほしい
な、と心の底から思っています。

まとめ

今回は、

  • ステレオタイプは、あるグループに属する人の特徴をひとくくりにすること
  • 効率的な判断を助ける一方で、差別・偏見の原因にもなる
  • 客観的なデータ(意見)や、個人と向き合う姿勢を持つことでステレオタイプによる悪影響を防げる

ということについてご紹介しました。

今回は自分以外の人や物事を判断するときのステレオタイプを中心に扱いましたが、
冒頭でも触れた通り、「HSPだから」で始まるステレオタイプに
自身が苦しめられ、選択の幅を狭めてしまっている人もいるのではないでしょうか。

でももうお分かりですよね。「HSPだから」何かが絶対にできなかったり、
絶対に合わない環境がある、ということはありません。

苦手な場所に無理に飛び込む必要もありませんが、
行ってみたいところ、やってみたいことは挑戦してみると案外うまく適応できたりします。
努力で何とかなることもたくさんあります。

きっとあなたはあなたが思っているよりしなやかです。
ステレオタイプに縛られるのはやめて、素直に生きてみませんか?

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【参考文献】
・情報文化研究所 情報を正しく選択するための認知バイアス辞典 フォレスト出版株式会社 (2021)

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